切なく悲しいラグビー取材

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シドニー郊外のラグビー・スタジアム
シドニー郊外のラグビー・スタジアム

 
2019年に日本で開催されるラグビー・ワールドカップ出場国のキャンプ地誘致に絡む番組のお手伝いをさせていただきました。

オーストラリアのナショナルチームであるワラビーズ誘致に向けて、ラグビーの本場である様子を取材したいという内容だったのですが、日本からの取材陣は別件もあるため、明日にも出発…という急なスケジュール。。。。

しかし、ラグビーに強い弊社(元ラグビー部マネージャーと元ラガーマンがいる!)としては、なんとかお応えしたい!と、あの手この手を使って、急遽、地元ラグビークラブの取材にこぎつけました。

 
ちょうどシーズンまっただ中のNSW州チャンピオンシップ・トーナメントで、優勝候補とも噂され、過去に何人ものワラビーズ選手を送り出した強豪チームです。

オーストラリアのラグビークラブは、子供(ジュニア)のチームから大人のチームまで、年齢別にいくつものカテゴリーに分かれたチームがひとつのクラブとして成り立っています。(ユースやジュニアなどのチームを抱える日本のJリーグのサッカークラブに当てはめると分かりやすいかも?)

 
取材の日は、夕方から行われるメインゲームとなる最上級クラス(1st Grade)のチームの試合を含め、朝からいくつかのカテゴリーで試合が行われていました。

私たちが到着した時は、若手チームの試合が始まるところで、先にクラブハウスなどを撮影しているうちに試合が始まって、わぁーわぁーという歓声が聞こえてきました。試合を会場へと向かう途中もにぎやかな歓声が聞こえていて、私たちも足早にグランドへと向かったのですが・・・

グランドに到着する寸前にピタっと歓声が止まり、なぜかシーンと静まり返っているではありませんか。慌てて試合をやっているところへ駆け寄ると、倒れた選手を他の選手や審判らが囲んでいて、試合が中断しているようでした。

 
怪我でもしたのかな?と、思いながら見ていましたが、なかなか試合が再開されません。どうしたんだろう??と、心配になりつつも、ラグビーではよくあることだし・・・と、あまり深刻には捉えていなかったのですが…

倒れている選手を囲んでいる人達がわかに騒がしくなり、クラブのマネージャーやスタッフも急いで駆け寄り、心臓マッサージが始まって、ハサミを持っている人はいませんか?と大声で呼びかけ始めたのです!!! そうこうしてるうちに、AEDを持った人も駆け付け・・・

え?ええっ??まさか・・・

 
必至で心臓マッサージやAEDによる蘇生術を施す。しかし、倒れた選手は起き上がってこない、、、

傍らで見ている私は、お願い!起き上がって!!と心の中で願うのが精いっぱいです。。。
他の選手たちは、敵も味方も入り混じって、うなだれながらも肩を組み、倒れた選手をじっと見守っています。観客の中には、もう泣き出している人も・・・

そのうち、救急ヘリが来るので場所を空けてください!との声がグランドに響きました。

救急ヘリが来る前に救急車が到着。しばらく、倒れた選手に何かしていましたが、あまり慌てる様子もなく、そのうちストレッチャーに乗せ、サイレンを鳴らさずにゆっくりと走り出しました。

 
「今日のこの後の試合は、すべて中止です」と、クラブ関係者が力なく観客に呼びかけると、一気に泣き崩れる人も…

ま、まさか、、、、、、

救急ヘリがグランド上空に…
救急ヘリがグランド上空に…

 
しばらくすると救急車がまた戻ってきて、そのうちに上空からヘリのプロペラ音が聞こえ始めました。救急ヘリが着陸するところへ救急車が到着。乗せていた選手をヘリに乗せ換えて、ヘリは飛び立っていきました。

心臓がバクバクし、どうしたらいいのかわからない状態の中、取材が続けられなくなってしまったために、なんとかしなければ、という思いも交錯。混乱する頭で、どこか近くで別のラグビーの試合がないか、慌てて探しました。

運よく(?)車で20分くらいのところでジュニアの試合をやっていることがわかり、取材陣を乗せて急行。その場で撮影許可の交渉をし、なんとか取材を続けることはできたのですが・・・

急遽、ジュニアの試合を取材…
急遽、ジュニアの試合を取材…

 
とはいえ、突然のハプニングで思う存分取材していただけなかったため、日本で可能な取材先をご案内するなどして、日暮れ近くにラグビー取材は終了。

その夜の便で日本へ戻る取材陣を空港へ送り届けた後、自宅に帰って見たニュースで、あの選手が24歳の若さで亡くなったことを知りました。

 
翌々日の地元紙は、亡くなった選手の話題が一面を飾り、翌日に日本で行われたNSW州代表チームのワラタズの試合では、ワラタズの選手が彼の死を追悼し、全員黒い喪章をつけて試合に挑んだそうです。

また、その週の週末のワラビーズの試合(ワラビーズ vs スコットランド戦)では、彼を追悼し、スタジアム内の全員で黙祷。スタジアムの大画面に在りし日の彼の雄姿が映し出されたそうです。

 
・・・と、思いがけないハプニングがあったロケでしたが、なんとか番組も無事放送されたようで、ホッと一安心。

でも、今でもあの日のことを思い出すと、胸がキューっと締め付けられるような感じがしてしまうのです…(合掌)

あいテレビ開局25周年スペシャル 時空を超えた楕円の縁(えにし)

 
P.S. 試合中に選手が亡くなる…というハプニングに見舞われたこのクラブ、その後、亡くなった彼の分までとクラブ一丸となって戦い、なんと、3rd Gradeと最上級クラスの1st Gradeで優勝!2017年の州チャンピオンとなりました!!

※弊社は、ラグビーをはじめ、野球、サッカー、テニスなど、スポーツ取材も割と得意です。ぜひ、一度お問合せください!

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Follow Miki Hirano:

Travel Journalist/ Writer/ Media Coordinator

人工物よりも自然に魅せられ、6年半暮らしたロンドンからオーストラリアへ移住。トラベル・ジャーナリストとして各種メディアへの執筆やラジオやテレビ出演などで情報を発信しながら、メディア・コーディネーターや旅行情報サイトの運営も。目下の関心事は、野生動物とエコ。