映画にもなり、地域の皆から愛された牧羊犬・オッドボールが、先週、15年の生涯を閉じました。
犬の年齢でいうと105歳。
オッドボールは、オーストラリアの観光名所「グレート・オーシャン・ロード」の西端ともいえるワーナンブール* 沖の小さなミドル島で、キツネの餌食となり、絶滅寸前まで落ち込んだリトル・ペンギンを守る役目を担っていました。
映画「オッドボール」は、この牧羊犬・オッドボールがペンギン・ガーディアン(保護犬)となるまでの、紆余曲折を描いた実話です。
映画が公開されるや否や、オーストラリア国内から称賛の声が上がり、世界各地の映画祭での上映が決定(残念ながら日本では未公開)。世界初ともいえる犬を使ったペンギン保護プロジェクトへの寄付も続々と集まったとか。
Hundreds of penguins are alive today in part due to the efforts of our city’s most famous dog. RIP Oddball. https://t.co/jv3SKuFN2k
— Warrnambool City (@WarrnamboolCity) 2017年2月15日
かつて、数百羽のリトル・ペンギンが生息していたミドル島。
2000年頃からキツネが侵入して捕食され、10羽ほどまで激減してしまいました。
≪追記≫ ちなみに、オーストラリアにはもともとキツネはいませんでした。現在見られるのは、1800年代に入植者が持ち込み、野生化したものです。各地でオーストラリア固有の生き物を餌に、大繁殖しており、大きな問題になっています。
ミドル島の周囲は、引き潮時には本土から渡れてしまうほど浅瀬。そのため、キツネがその時間に島へ侵入してしまうのが原因と考えられ、様々な手段でキツネを退治しようとしましたが、なかなか功を奏しませんでした。
そこへ、放し飼いの養鶏農場を経営していたアラン ‘スワンピー’ マーシュさんが、鶏を野キツネから守るために訓練し、飼っていたメスのイタリア原産マレンマ・シープドッグを島へ導入することを提案。
しかし、島が自然保護区になっていることや新たな海洋センター建設の話が持ち上がるなど、なかなか思うように進まず… 仕舞にはオッドボールが駆除対象犬として捕獲されてしまい間一髪!?・・・と、なかなか波乱万丈なストーリー。
最終的には、地域のカウンシル(役場)がGoサインを出し、オッドボールがペンギン・ガーディアン第一号になるわけですが、ペンギンを保護する役目を犬にやらせることに、なかなかOKがでないのも理解できます。
なぜならば、通常、飼い犬や飼い猫がペンギンを殺ってしまうことがあるからです。食べるためではなく、遊び(プレイ)の一環として… シドニー近郊のペンギン生息地では、野生化したキツネだけでなく、ペットの犬や猫が問題化している現状があります。
Oddball, The Dog Who Saved Entire Island Of Teensy Penguins Dies Aged 15https://t.co/hiSjZG5W1H pic.twitter.com/amOdBFLiUL
— 9GAG (@9GAG) 2017年2月21日
しかし、ワーナンブールでは、オッドボールの活躍により、マレンマ・シープドッグが担うペンギン保護プロジェクトが定着。ペンギンの個体数は大幅に増加しました。現在は、オッドボールの後を引き継いだユディとトゥラの二匹が、ペンギン・ガーディアンを務めています。
自分の子供を守るように、小さなペンギンたちを外敵から守り、一躍地元のヒーロー(いや、メスなのでヒロインですね…(^_^;))となったオッドボール。
きっと天国からもペンギンたちを温かく見守ってくれることでしょう!ゆっくりおやすみ、RIP Oddball!
※映画は、実際にワーナンブール近郊で撮影されており、美しいグレート・オーシャン・ロードの景観も見ものです。また、オーストラリアでは、こうしたユニークな野生動物や自然保護プロジェクトがたくさん実施されており、自然との共存を考えるのに絶好の環境だと思います。
* ウォーナンブールという表記をよく見かけますが、オーストラリア政府観光局の記載に合わせ、ワーナンブールとしています。